「仕入れ資金って、どれくらい用意すればいいですか?」
「300万円あれば足りますか?」
この記事はもともと「売上目標の3倍を用意しましょう」という結論で書いていました。5年ほど前の話です。
でも、いま同じことを言うのは無責任だと思って、全部書き直しました。理由はひとつです。
7年前の300万円と、いまの300万円は、まったく別のお金だからです。
数字はきついですが、知らずに始めるほうがもっときついので、全部書きます
結論:月商目標の2〜4倍。小さく狙うほど多く要ります

先に答えを出します。事業資金として用意しておきたい金額は、目標によってこう変わります。
| 月商目標 | 用意しておきたい事業資金 | 月商の何倍 |
|---|---|---|
| 20万円 | 約75万円 | ×3.8 |
| 30万円 | 約94万円 | ×3.1 |
| 50万円 | 約134万円 | ×2.7 |
| 100万円 | 約231万円 | ×2.3 |
| 150万円 | 約328万円 | ×2.2 |
昔から言っている「売上目標の3倍」は、いまも間違ってはいません。ただし小さく狙うほど、倍率は3倍を超えていきます。楽天の固定費が、売上の大小に関係なく乗ってくるからです。
「月20万くらいの副業で」と思っている人ほど、倍率がきつくなる。ここは正直に言っておきたいです
7年前の300万円と、いまの300万円は違います

僕が中国輸入を始めたころ、1元は16円でした。それが2026年8月のいまは24円です。1.5倍になっています。
同じ300万円で、買える量が3分の1減りました

| 1元16円のころ | 1元24円のいま | |
|---|---|---|
| 300万円で買える元 | 187,500元 | 125,000元 |
| 昔を100とすると | 100 | 66.7 |
| 昔と同じ量を買うのに必要な円 | 300万円 | 450万円 |
つまり300万円を用意しても、当時の200万円ぶんくらいの買い物しかできない、ということです。
商品の個数で見ると、もっと分かりやすい
| 1個の仕入れ値 | 1元16円のとき | 1元24円のいま | 減る数 |
|---|---|---|---|
| 10元 | 18,750個 | 12,500個 | ▲6,250個 |
| 30元 | 6,250個 | 4,166個 | ▲2,084個 |
| 50元 | 3,750個 | 2,500個 | ▲1,250個 |
| 100元 | 1,875個 | 1,250個 | ▲625個 |
だから「売上は伸びているのに、利益は横ばい」になる
僕の店の話をします。この5年ほど、売上は右肩上がりなのに、利益はほぼ横ばいです。

理由は1つではありません。円安による仕入れの高騰に加えて、資材費・送料・広告費・楽天のシステム利用料といったいろいろなものが少しずつ上がっているからです。
いまの売上を7年前に出せていたら、まったく違う景色だったと思います。それくらい、同じ売上でも中身が変わりました。
ただし、為替以外はそこまで上がっていません(正直な話)
ここは正直に書きます。国内配送・RSL・梱包資材については、そこまで劇的に上がった実感はありません。
感じるのはじわじわとした値上げのほうです。たとえば楽天の広告のクリック単価が10円から20円になって、その代わりに「新しい機能が使えるようになりました」と案内が来る。値上げが機能追加とセットで来るので、値上げだと気づきにくい。そういうものが増えたな、という感覚です。
お金は上がった。でも、難易度は下がった
悪い話ばかり書いたので、逆のことも書いておきます。環境そのものは、昔よりはるかに良くなっています。
| 2018年ごろ | 2026年8月 | |
|---|---|---|
| 配送 | ヤマトなどと自分で契約するしかなかった | RSLに預ければ済む |
| 分からないこと | 自分で調べるしかない | AIに聞けば大体わかる |
| 代行業者の情報 | 手探りだった | 情報が出ている |
| 梱包資材 | 業者から買うのが基本 | 百円ショップでも買える |
| 仕入れ原価 | 1元16円 | 1元24円 |
お金の面は確実にきつくなりました。でもやることの難易度は、間違いなく下がっています。僕が7年前に3年かけて遠回りした部分は、いまならかなり短縮できるはずです。
必要な資金は、どう計算するのか

「3倍」という言葉だけだと自分に当てはめられないので、中身を分解します。使うのはこの3つの足し算です。

- 仕入れが寝ているぶん = 月商 × 原価率 × 3ヶ月
- 予備 = ①の30%(売れ残り・不良・伸びたときの追加仕入れ)
- 楽天の初年度固定費 = 36万円(初期登録6万+がんばれ!年間一括30万)
なぜ「3ヶ月」寝るのか
中国から仕入れる場合、お金を払ってから、その商品の売上が入金されるまでにだいたい3ヶ月かかります。
| かかる時間 | |
|---|---|
| 発注して代金を払う | —— |
| 商品が届く | 約3〜4週間(船便ならもっと) |
| 売れる | 在庫が全部すぐ売れるわけではない |
| 楽天から入金される | 月1回のまとめ入金 |
この間ずっと、払ったお金は在庫の形で寝ています。しかも次の月の売上を作るには、寝ている間にも次を仕入れないといけません。だから3ヶ月ぶんの仕入れ資金が、常に手元から出ていっている状態になります。
月商目標から引いた早見表

| 月商目標 | 仕入れ3ヶ月ぶん | 予備30% | 楽天固定費 | 必要資金 | 月商の何倍 |
|---|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 30万円 | 9.0万円 | 36万円 | 75万円 | ×3.8 |
| 30万円 | 45万円 | 13.5万円 | 36万円 | 94万円 | ×3.1 |
| 50万円 | 75万円 | 22.5万円 | 36万円 | 134万円 | ×2.7 |
| 100万円 | 150万円 | 45.0万円 | 36万円 | 231万円 | ×2.3 |
| 150万円 | 225万円 | 67.5万円 | 36万円 | 328万円 | ×2.2 |
| 200万円 | 300万円 | 90.0万円 | 36万円 | 426万円 | ×2.1 |
円安で、必要な資金がどれだけ増えたか
同じ月商50万円を狙う場合で、原価率だけを動かしてみます。
| 原価率 | 必要資金 | 月商の何倍 |
|---|---|---|
| 40%(1元16円のころの感覚) | 114万円 | ×2.3 |
| 50%(1元24円のいま) | 134万円 | ×2.7 |
| 60%(低単価商品だとこうなる) | 153万円 | ×3.1 |
同じ月商を狙うのに、必要な資金が約2割増えた。これが「7年前の300万円と、いまの300万円は違う」の中身です。
売れているのに、お金がなくなる仕組み

資金が足りなくなるのは、売れなかったときだけではありません。売れているときのほうが危ないくらいです。
数字で追いかけてみる
月商20万円を目標に、60万円の資金で始めた場合を追ってみます。
| 時期 | 起きること | 手元の現金 |
|---|---|---|
| 2月1日 | 仕入れる(−10万円) | 50万円 |
| 2月20日 | 商品が届く。販売開始 | 50万円 |
| 3月1日 | 次の月ぶんを仕入れる(−10万円) | 40万円 |
| 3月10日 | 10万円分売れる(売上20万円) | 40万円 |
| 3月31日 | 売上20万円が振り込まれる(+20万円) | 60万円 |
| 4月1日 | また仕入れる(−10万円) | 50万円 |
| 4月30日 | 3月分の変動費4万円を支払う(−4万円) | 46万円 |
お金は「稼ぐ」「使う」というより、回っている・流れているという感覚に近いです。
サラリーマンのときは入ってきたお金を全部使っても平気だった。事業だと、流れが止まらないように置いておくお金が要るんです
伸びたときに、いちばん詰まる
そしてここからが本番です。売れ始めると、こうなります。
- 売上が上がる → 仕入れる
- めちゃくちゃ売れる → さらに仕入れる
- さらに売れる → もっと仕入れる
- 仕入れるお金がない(売上の入金が間に合わない)
「同じ額だけ仕入れればいいのに」と思うかもしれませんが、実際にその場面に立つと無理です。人気商品の在庫が切れて、「入荷はいつですか」と問い合わせが来る。機会損失であることも事実なので、仕入れたくなります。
立ち上がってきたら、そのデータを持って早めに追加の融資を相談するのが現実的な打ち手だと思います。
生活費は、別の財布で用意してください

ここまでの金額に、生活費は1円も入っていません。用意するお金は2本立てです。

借りたお金を生活費に回すのは、資金使途違反です
ここは大事なので、はっきり書きます。融資は「事業に使う」という前提で借りるお金です。生活費に回すのは資金使途違反にあたります。
では、生活費は何ヶ月分いるのか
僕の答えより先に、一般的に言われている目安を書きます。こちらは僕の経験ではなく、調べたものです。
| 立場 | 生活防衛資金の目安 |
|---|---|
| 会社員 | 生活費の3〜6ヶ月分 |
| 個人事業主・フリーランス | 生活費の6ヶ月〜1年分 |
| 扶養する家族がいる場合 | 1年分を最低ライン、2年分を目標 |
会社員より多めに必要とされる理由は、はっきりしています。
- 収入の変動が大きい
- 国民健康保険には原則傷病手当金がない(病気で止まると収入がゼロ)
- 雇用保険に原則加入できない=失業手当がない
- 事業が立ち上がるまでに6〜12ヶ月かかるとされている
ちなみに、僕は2ヶ月分しか持っていませんでした
正直に書きます。僕が独立したとき、生活費は2ヶ月分しか持っていませんでした。死ぬか生きるかのせめぎ合いでやっていました。
自分の話なのに「参考にするな」と書くのは変な気分ですが、ここは本当にそう思っています
借りたお金は、ほぼ全部が仕入れに消えます

僕が1回目に借りたお金の使いみちは、ほぼ全額が仕入れでした。
ネットショップを自宅で始めると、楽天の出店料以外にはほとんどお金がかかりません。パソコンはもう持っているし、固定電話は安いし、資材も最初は売上が小さいのでたかが知れています。
ところが、それが融資では不利に働きます
意外に思われるかもしれませんが、使いみちが仕入れしかないと、お金は借りにくいです。
| 業種 | 資金の使いみち | 貸す側から見ると |
|---|---|---|
| ラーメン屋・美容室 | 内装・厨房機器・設備 | モノが残る。使いみちが具体的 |
| ネットショップ | ほぼ全額が仕入れ | 売れなければ在庫。曖昧に見える |
「改装費と機材で1,000万円必要です」だと通りやすいのに、「全部仕入れです」と言うと、そこで止まってしまう。僕が面談のたびに「希望額より少なくなるかもしれません」と言われたのも、たぶんここが理由です。
やったのは「分解して具体的にする」こと
僕がやったのは、事業計画書に実際に必要になる費用を全部洗い出して書くことでした。出店料・資材・通信費・在庫の内訳。「仕入れ資金300万円」の一行で終わらせず、何を、いくらで、何個仕入れるのかまで書きました。
その金額を用意できないときは、どうするか

ここまで読んで「そんなに用意できない」と思われた方へ。正直に答えます。
その場合、いま無理に「楽天から」始める必要はありません。先に打てる手が3つあります。
理由は単純です。楽天は売れても売れなくても固定費が出ていく場所だからです。資金が足りない状態で入ると、赤字の月を耐えられません。これは根性の問題ではなく、構造の問題です。
そして耐えられなくなると、焦って値下げする、焦って追加で仕入れる、本来なら撤退すべき場面で撤退できない——という一番まずい動き方になります。
先に打てる手が、3つあります
道が3つあります。
- 小さく始める——固定費のかからない販路で、まず売ってみる。実績ができれば、それが融資の材料にもなります
- 元手のかからない収益を作る——仕入れが要らない形で、まず先にお金を作る
- 他の金融機関も当たってみる——公庫だけが選択肢ではありません。断られても終わりではない
どの道から行くかは、あなたの状況で決めてください。楽天は逃げません。実績と資金が整った時点で来たほうが、同じ挑戦でもずっと楽に戦えます。順番の話です。
よくある質問

Q1. 自己資金がゼロでも、融資で全部まかなえますか?
制度のうえで自己資金の数値要件はなくなりましたが、審査では自己資金を見られます。それに全額を借金でスタートすると、判断が慎重になれません。ある程度は自分のお金でやったほうが、精神的にも楽です。
Q2. 「売上目標の3倍」は、もう古いということですか?
古くはありません。いまも生きています。ただし小さく狙うほど倍率は3倍を超えますし、大きく狙うなら2倍台で回ります。一律の3倍ではなく、この記事の表で自分の目標から引いてみてください。
Q3. 仕入れは、最初から全額使ってしまっていいですか?
よくないです。最初は小さく試して、売れ方を見てから増やすのが基本です。用意した資金は「全部使うためのお金」ではなく、「伸びたときに動けるようにしておくお金」です。
Q4. 為替が円高に戻れば、また楽になりますか?
多少は戻ると思います。一度下げた売価をわざわざ上げる店は少ないので、コストだけが下がって利益率が回復するからです。
ただ、いまの金利環境を見ていると、円高に期待できる材料は僕にはあまり見えません。「そのうち戻るだろう」を前提にした計画は、計画ではなく祈りになってしまいます。いまの水準が続く前提で組んでください。
Q5. 資金が足りなくなったら、追加で借りられますか?
返済の実績があって、売上のデータが出ていれば、相談はできます。ただし資金が尽きてから動くと間に合いません。立ち上がってきた段階で、早めに相談しておくのがいいと思います。
さいごに

今回は「仕入れ資金はいくら用意すればいいか」を、いまの数字で書き直しました。
- 事業資金は月商目標の2〜4倍。小さく狙うほど倍率は上がる
- 7年前の300万円は、いまの450万円。同じ金額で買える量は3分の2に
- 生活費は別の財布で6ヶ月〜1年ぶん(借りたお金は使えません)
- 危ないのは売れないときより売れているとき。予備を残しておく
- 金額が揃わないうちは、先に小さく始めて実績を作る道がある。楽天は逃げない
数字が厳しいことは、書いていて僕もそう思います。ただ、知らずに始めて途中でお金が尽きるほうが、ずっとつらいです。先に知っておけば、準備のしかたが変わります。
そして最初に書いたとおり、この記事もいつか古くなります。為替も、楽天の料金も変わります。読むときは、その情報がいつのものかを必ず見てください。
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この記事を書いた人

この記事の筆者プロフィール【ラクマート認定講師:TAKAHIRO】
- 2015年から3年間ネットショップに挑戦するも1円も稼げず、100万円以上の借金を負う
- 2018年に融資を受け、ネットショップ経営に独学で挑戦する
- 初年度から年商2,000万円以上を売り上げる
- 2022年に楽天市場「月間優良ショップ」を受賞
- 2022年に始めたYouTubeが1ヶ月で登録者1万人突破(現在は3万人以上)
- 2023年に楽天市場「ショップ・オブ・ザ・マンス【都道府県賞】」を受賞
- 2024年にラクマート史上初の「認定講師」7人のうちの1人に選ばれる
- 楽天市場は出店8年目。2025年度は年商6,000万円、累計売上3億円を突破
- ラクマートでの累計仕入れは6,000万円以上。最上位のV10会員
- 紹介したラクマート利用者は1,400人以上。中国の工場・船便倉庫と1688本社も現地視察ずみ







