「今から楽天市場に出店するのって、もう遅いですか?」
この質問を、本当によくいただきます。
普通、僕のような立場の人間は「今がチャンスです!」と答えるものだと思います。教材も売っていますし、そう言った方が商売としては正しい。
でも僕は、その答え方をしたくないんです。
今日は、セールスの前に現状認識の話をさせてください。2026年のいま、僕の店で実際に起きていること。これから始める人が直面する環境。それを数字を隠さずに書いた上で、「遅いのかどうか」の僕なりの結論をお伝えします。
長くなりますが、出店を迷っている方は、申し込みボタンを押す前にこの記事だけは読んでほしいと思っています。
僕の店で、いま起きていること
まず、僕自身の話からします。
僕が中国輸入を始めた頃、1元は16円でした。それが今、24円です。ドル円は163円。仕入れコストだけで約1.5倍になりました。
上がったのは仕入れだけではありません。
- 国際送料
- 段ボールや緩衝材などの資材
- 国内の配送費
- 楽天の倉庫(RSL)の保管料・出荷費
全部、上がりました。
じゃあ、その分を販売価格に乗せられたのか。
乗せられていません。
うちの主力商品のひとつは、7年前と1円も変わらない価格で売り続けています。
「上げていない」のではなく「上げられていない」んです。ここが重要です。
結果どうなったかというと、かつて40%ほど出ていたその商品の利益率は、今は25%前後まで圧縮されました。コストは1.5倍、価格は据え置き。間に挟まれた利益が、静かに削られ続けている。これが、年商6,000万円を7年やってきた店舗の、2026年のリアルです。
誤解のないように書いておくと、これは「何も手を打たなかった店」の数字ではありません。打てる手は打った上で、それでも構造的に削られていく。そういう話です。
そしてこの現実は、これから始める人にとって他人事ではありません。7年やってきた店の利益率がこれだけ圧縮されているということは、これから参入する人は最初からこの利益率水準でスタートするということだからです。僕らが太かった時代の貯金で耐えている部分を、新規参入者は持っていません。
なぜ、値上げできないのか
理由はシンプルで、市場原理です。
この数年で競争が激しくなり、販売価格は完全に固定化されました。同じような商品を売る店が並んでいる中で、先に値上げした店から順に売れなくなる。だから誰も動けないんです。
かつて40%、50%と出ていた利益が、今は20%そこそこ。それでも「利益が出ているうちはOK」と、みんな我慢して価格を据え置いています。誰かが音を上げるのを待ちながら、全員で耐えている状態です。
「じゃあ、全店で一斉に値上げすれば解決するのでは」と思うかもしれませんが、それも起きません。仮に既存の店が足並みを揃えて値上げしても、そこに新規参入者が「相場より安い価格」で入ってきて、相場を下に更新してしまうからです。誰かが我慢の列を抜けても、すぐ別の誰かが列に並ぶ。この繰り返しで、価格の天井は固定され続けます。
ここで、こう思った方もいるはずです。
「円高に戻れば、楽になるんじゃないの?」
実は、円高に振れれば利益は多少戻ると僕は思っています。
価格には「下方硬直性」という性質があるからです。すでに底値で売っている商品を、仕入れコストが下がったからといって、わざわざさらに値下げする店はほぼいません。だからコストだけが下がって、価格は据え置かれ、利益率が回復する。理屈の上ではそうなります。
ただ、その円高が来ない。
今の金利環境や政策の方向を見る限り、円高に期待できる材料は、僕にはほぼ見えません。「円高になれば利益は戻る」けれど「円高はほぼ来ない」。つまり利益は、日に日に厳しくなっていく。これが僕の予想です。
「そのうち為替が戻るだろう」を前提にした事業計画は、計画ではなく祈りです。これから始める人は、今の為替水準が続く前提で数字を組む必要があります。
2026年、参入の入口はどうなっているか
環境の変化も、正直に並べます。
まず、Yahoo!ショッピング。 2026年9月から有料プラン化される流れです【要確認: Yahoo!ショッピングの2026年9月有料プラン化の正式発表内容・料金体系(2026年2月発表: 月額システム利用料1万円+売上ロイヤリティ2.5%、9月1日適用)】。これまでネットショップの世界では「まず無料のYahoo!で腕試しして、感覚を掴んでから楽天へ」というルートが定番でした。初心者にとっての「練習場」だったわけです。その練習場が、有料化で消えます。
次に、Amazon。 飽和が進み、広告費なしでは新規商品がほぼ露出できない激戦区になりました。「出品すれば売れる」時代のAmazonを知っている人ほど、今のAmazonの厳しさに驚くと思います。手軽に出せることと、売れることは、もう完全に別の話になっています。
そして、楽天市場。 「最強配送」ラベルが検索順位に直結するようになり、RSL(楽天の倉庫)への預け入れを前提としたコスト構造になりつつあります。自宅からの自社出荷だけで戦う選択肢が、年々細くなっているんです(預けるかどうかの判断軸は、物流の記事で詳しく書きます)。RSLを使うということは、開店初期からまとまった在庫を倉庫に預け、保管料や出荷費を固定的に払っていくということです。「売れてから物流を整える」ではなく「物流コストを織り込んだ状態でスタートする」ことが求められます。
3つ並べて見えてくるのは、どのモールも「小さく安く試す」という入口が閉じつつある、ということです。
出店のハードルが上がったというより、「なんとなく始めてみる」が許されない構造になった。僕はそう捉えています。裏を返せば、始める前の設計、つまりコスト計算と資金計画の精度が、そのまま生存率になる時代です。
失敗できる範囲が、圧倒的に狭くなった
ここが、この記事で一番伝えたいところです。
僕がこの世界に入ったのは2015年です。そこから3年間、1円も稼げませんでした。しかも途中で、怪しいSEO業者に騙されて120万円の借金まで作っています。
3年間で学んだことは「失敗の仕方」だけです(笑)
それでも僕は、2018年に融資を受けて「最後の挑戦」として中国輸入×ネットショップに再挑戦して、初年度に年商2,000万円までいけました。
ここで大事なのは、僕に才能があったからではない、ということです。
2018年は、市場が伸びていたから、多少ヘタな仕入れをしてもリカバリーできたんです。
初回の仕入れを外しても、次の仕入れで取り返せた。商品ページ作りで遠回りしても、市場の追い風が待ってくれた。3年間失敗し続けた人間にも、やり直しの余地が十分にあった。あの頃の失敗は「授業料」で済んだんです。
2026年は違います。
仕入れコストは1.5倍。販売価格は上げられない。利益率は薄い。つまり、一回のミスで削られる体力が大きく、回復に使える利益が小さい。同じ失敗をしても、昔は授業料で済んだものが、今は退場理由になり得ます。
感覚的な話をすると、利益率が40%あった時代は、仕入れた商品のうちいくつか外しても、当たった商品の利益で吸収できました。外れは「授業料」として帳簿に収まったんです。利益率25%の世界では、そのバッファが半分近くまで痩せています。同じ数の失敗をしたら、月の利益が丸ごと消える。数字にすると、それだけの違いです。
しかも初心者は、必ず失敗します。これは断言できます。
- 初回仕入れで、売れると思った商品が読み通りに動かない
- 商品ページの作り込みで遠回りして、機会損失が積もる
- 効果の出ない広告にお金を流してしまう
- 資金繰りを甘く見て、追加発注のタイミングで現金が足りなくなる
僕もほぼ全部やりました。問題は失敗するかどうかではなく、失敗の総量を許容範囲に収められるかどうかです。そして2026年は、その許容範囲そのものが狭い。だからこそ、避けられる失敗を事前に潰しておくことの価値が、かつてなく大きくなっています。
「失敗の許容範囲」を数字で見てみる
感覚論だけだと伝わらないと思うので、架空の数字で計算してみます。
仮に、資金300万円で始めるとします。うち150万円を初回仕入れに使い、月商100万円を目指すとしましょう。
利益率40%の時代なら、月商100万円で月の利益は40万円です。初回仕入れの3分の1、つまり50万円分の商品を外して不良在庫にしても、1ヶ月ちょっとの利益で取り返せました。失敗が「痛いけど続けられる」範囲に収まるんです。
同じ失敗を利益率25%でやるとどうなるか。月の利益は25万円。50万円の失敗を埋めるのに2ヶ月かかります。そしてその2ヶ月の間も、RSLの保管料や月額の固定費は容赦なく出ていきます。仕入れに回せる現金が細り、次の発注が小さくなり、売上が伸びず、さらに現金が細る。この負の回転に一度入ると、抜け出すのは本当に難しい。
同じ「50万円の失敗」でも、利益率が40%か25%かで、致命傷になるかどうかが変わるんです。
これが「失敗の許容範囲が狭くなった」ということの、数字での意味です。だから2026年に始める人は、失敗の練習をする余裕がない。最初から、避けられる失敗を全部避けにいく必要があります。
僕が120万円騙されたときの教訓
避けられる失敗の代表例を、僕自身の恥ずかしい話でひとつ。
稼げない3年間の途中で、僕は業者に「SEO対策」を依頼して、120万円の借金を作りました。当時の僕は、売れない原因が分からず焦っていて、「これで解決するなら」と藁にすがったんです。
今の僕が当時の契約を見たら、10秒で断れます。危険信号が全部揃っていたので…(泣)
- 「上位表示を保証します」と言い切る(順位は誰にも保証できません)
- 実績として見せられた事例が、自分では検証できないものばかり
- 成果が出る前に、先に大きな金額の契約を求めてくる
- 何をやるのかの説明が、専門用語でぼかされていて具体性がない
焦っている人間は、この程度の危険信号が見えなくなります。そして2026年は、当時の僕と同じように焦った初心者を狙う「サポートビジネス」が、当時より増えています。環境が厳しくなるほど、不安につけこむ商売は儲かるからです。
外部に何かを頼むのは、「それが何をするものか」を自分で説明できるようになってからにしてください。 説明できないものにお金を払うのは、投資ではなくお布施です。僕はこれを120万円で学びました。あなたはこの段落で済ませてください。
もし今の環境で、2015年の僕みたいな「なんとなく始めて、なんとなく騙されて、なんとなく3年溶かす」やり方をしたら。たぶん、再挑戦の資金は残りません。
初心者が失敗できる許容範囲が、数年前と比べて圧倒的に狭くなっている。これが2026年に始める人が最初に受け入れるべき現実だと思っています。
それでも「道がある人」はいる
ここまで読んで「じゃあもう無理じゃん」と思った方。その感覚は正常です。
正直に言うと、2023年や2024年に始めて、すでに店舗の基盤がある方にとっては、今も十分に戦える良いビジネスです。実際、僕の発信を見て始めた方の中には、この環境でもしっかり利益を出している方がたくさんいます。積み上げてきた経験と店舗の信頼は、この逆風の中でもちゃんと武器になっています。
でも、2026年の今からゼロで、「とりあえず中国輸入」という軽い気持ちで飛び込むこと。これは僕は勧めません。「誰でも儲かるフェーズ」は、終わりました。
じゃあ、全員に道がないのか。そうは思っていません。
環境が厳しくなるほど、退場していくのは「なんとなく」で運営している人からです。
- なんとなく仕入れて、なんとなく値付けする
- コスト構造を把握しないまま、売上だけを見る
- 資金繰りを設計せず、入金と支払いのズレで詰む
- 施策を思いつきでやって、何が効いたか分からない
こういう運営が退場していく一方で、コスト構造を1円単位で理解して、資金繰りを設計して、レビューと信頼を積み上げる人には、むしろ相対的に有利な市場になっていきます。競争相手が勝手に減っていくからです。
環境が厳しい時代ほど、「正しいやり方」を「正しい順番」でやることの価値は上がります。
「正しい順番」を、もう少し具体的に書きます。僕が考える順番はこうです。
- 楽天というプラットフォームの構造とコストを理解する
- 資金繰りを設計する(いくら用意して、どう配分するか)
- その資金と利益率で成立する商品をリサーチする
- 店舗を構築し、商品ページを作り込む
- 顧客満足の施策でレビューと信頼を積み上げる
- 最後に、広告で加速する
失敗する人の多くは、この順番を逆からやります。いきなり広告にお金を入れる。ページが整う前に集客する。コストを把握しないまま大量に仕入れる。順番を間違えると、同じ努力量でも結果はまるで変わります。穴の空いたバケツに水を注ぐのが早いか、先に穴を塞ぐのが早いか、という話なんです。
始める前に決めておくべき3つのこと
順番の話とセットで、出店前に必ず決めておくべきことを3つ書きます。どれも「始まってから考えればいい」と後回しにされがちで、後回しにした人から死んでいくものです。
1つ目、撤退ラインを先に決める。
「資金がいくらを切ったら、追加仕入れを止めて在庫を捌く方向に切り替える」というラインを、始める前に金額で決めておいてください。始まってからでは決められません。人間は、突っ込んだお金が増えるほど「あと少しで回収できるはず」と判断が歪む生き物だからです。僕が資金ショート寸前まで追い込まれたのも、走りながらなら冷静に判断できるはずだという過信が原因でした。冷静な自分がいるうちに、冷静でなくなった未来の自分を縛っておく。これが撤退ラインの本質です。
2つ目、毎月見る数字を決める。
売上だけ見ていると、店は必ず傾きます。最低限、売上・利益率・現金残高・在庫金額の4つは毎月固定で見てください。特に現金残高と在庫金額です。売上が伸びているのに現金が減っていく状態は、成長ではなく事故の前兆であることが多い。中国輸入は発注から売上入金まで2〜3ヶ月かかることもあるので、この時間差を数字で捕まえられない人は、黒字のまま資金が尽きます。
3つ目、最初の商品に求める条件を決める。
初心者の最初の商品は、「儲かりそう」で選んではいけません。「外しても致命傷にならない」で選ぶべきです。単価が高すぎない、初回ロットが小さくて済む、流行り廃りが激しくない、価格競争がまだ煮詰まりきっていない。この条件を先に紙に書いて、条件を満たさない商品は、どれだけ魅力的に見えても見送る。最初の1商品の役割は、儲けることではなく、店を殺さずに経験値を積むことだからです。
そしてもうひとつ。道具の面では、今は史上最強の時代です。かつては組織や外注チームが必要だった作業が、AIを使えば個人でもこなせるようになりました。7年前の僕が今のツールを持っていたら、あの3年間の遠回りはかなり短縮できたはずです。
道具は史上最強。環境は史上最難。
2026年の楽天出店は、この両方を分かった上で挑む場所なんです。
さいごに
「もう遅いですか?」への僕の結論を書きます。
軽い気持ちで始めるなら、遅いです。やめた方がいい。数年前なら授業料で済んだ失敗が、今は致命傷になるからです。
でも、この現実を全部分かった上で、正しいやり方を正しい順番でやると決めた人にとっては、まだ遅くない。むしろ「なんとなく組」が参入しなくなる分、本気の人の生存率は上がっていくと僕は見ています。
要は「遅いかどうか」ではなく、「どっちのやり方で入るか」なんじゃないかなと思います。
僕は3年間の失敗と120万円の借金の後に、やっと正しい順番にたどり着きました。
遠回りは、僕の分だけで十分です(笑)
なお、その「正しいやり方と順番」の全手順は、教科書の1章から13章まで順番通りにまとめてあります。特にこの記事の内容と直結するのは、コスト構造の2章と資金繰りの5章です。
少し厳しい内容だったかもしれませんが、判断材料になれば嬉しいです。
今回は以上です!!
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