2019年3月、僕の店には2月から合わせて400万円ほどの売上がありました。粗利益率は約60%。数字だけを見れば、かなり順調な店に見えます。
ところがそのとき、僕の銀行口座は生活費を含めて50万円を切っていました。クレジットカードは利用上限まで達していて、仕入れのたびに銀行振込をしていました。
注文は毎日入るのに、使えるお金は減り続ける。この記事は、そのときに何が起きていたのかと、いま毎月どうやって現金を見ているかの話です。
売上が伸びているのに、口座の残高が減っていく
当時は中国の春節による仕入れの遅れで、発送できない注文が何百件もたまっていました。
注文が入れば、管理画面の売上は増えます。でもモールの入金は、注文が入った日ではなく、商品を発送して売上が確定したあとです。

最終的に、僕は妻にこう言いました。「ごめん。お金がなくなっちゃった。生活費が厳しいから、パートに働きに行ってもらってもいい?」
妻は「了解。早速探してみるわ」と、すぐに週5日の早朝バイトを探してくれました。朝に働いて、帰ってから店の梱包をして、子どもの世話もする。
月商が伸びている夫の隣で、生活費のために妻が働きに出る。売上だけを見れば、まったく説明のつかない状況でした。
でも、ネットショップではこれが起きます。売上と利益と現金は、同じ日に店へ来ないからです。
入金より先に、仕入れと固定費が出ていく
当時の感覚では、モールからの入金は発送した月の翌月の中旬から月末に来ることが多かったです。入金の時期は出店先によっても違いますし、条件も変わります。
一方で、仕入れは先です。粗利益率が60%なら、400万円を売るための商品原価は160万円ほど。注文を受けたので発注する。カードで払う。枠が埋まれば銀行から振り込む。

商品が届かない。だから発送できない。発送できないから入金されない。それでも新しい注文は入るので、次の仕入れ代がまた必要になります。
「利益が出ている」と「現金がある」は、同時に成立しない
このとき初めて、利益が出ていれば店は安全という考えが間違っていると分かりました。

利益は、売れた商品から原価や費用を引いた結果です。現金は、今日、支払いに使えるお金です。計算上200万円の利益があっても、入金が2か月先で、今週160万円を払うなら、今日の仕入れはできません。
家賃も生活費も、計算上の利益では払えません。口座にある現金でしか払えないんです。
「黒字倒産」という言葉があります。当時の僕が会社として厳密にその状態だったかは別として、儲かっているはずなのに支払うお金がないという感覚は、あのときによく分かりました。
外から見ると、売上が伸びている店はうまくいっている店に見えます。でも実際に店を続けられるかどうかを決めているのは、売上でも利益率でもなく、支払日に現金があるかどうかです。
儲かるかどうかの話は、別の記事にもう少し詳しく書いています。
在庫は数字の上では資産、でも支払いには使えない
もう一つ厄介なのが在庫です。仕入れた瞬間、現金は減りますが商品は増えるので、帳簿の上では損をしていません。
ただ、その商品で家賃は払えません。在庫は現金が商品の形に変わって止まっている状態です。売れて、発送して、入金されて、はじめて現金に戻ります。
だから僕は、商品1個の利益だけでなく、お金が何日間、外に出たままになるかを見るようになりました。並べるのはこの4つの日付です。
現金が戻るまでの4つの日付
- 仕入れ代を払う日
- 商品が届く日
- お客様へ発送できる日
- モールから入金される日
在庫を持つ商品なら、ここに仕入れてから売れるまでの期間も足されます。100万円分を1か月で売り切って翌月に入金される商品と、半年かけて売れる商品では、同じ利益率でも資金の戻り方がまったく違います。
在庫を持たない売り方なら安全かというと、そうとも限りません。注文後に仕入れて、納期が1か月延びて、発送後の入金も翌月なら、仕入れ代が2か月近く戻ってこないこともあります。
資金が細ったときに、最初に止めたもの
あのとき実際にやったのは、売上を増やす動きではありませんでした。出ていくお金の速度を落とすことです。
先に止めたこと
- 納期が読めない商品の新規の発注を止める
- 回転の遅い在庫を、利益が薄くても現金に戻す
- 注文を増やすための費用を、いったん抑える
- 毎月出ていく固定費を、1つずつ見直す
売上を伸ばす施策は、現金が戻ってくるより先にお金を使います。苦しいときにここへお金を入れると、谷がさらに深くなります。
もう一つ言えるのは、資金の相談は、なくなってからでは遅いということです。売上が伸びていて数字が良いときのほうが、事業の説明もしやすくなります。
借りられるだけ借りる、という話ではありません。入金までの時間差を埋めるのに、いくら必要なのかを先に計算しておく、ということです。
いま僕が毎月見ている、現金の並べ方
いまは月ごとの利益表とは別に、週ごとの入金と支払いを並べています。見るのは月末残高ではありません。

見るのはいちばん残高が少なくなる日です。月初に100万円あって月末も100万円に戻るとしても、途中のカード支払日で足りなくなるなら、その計画は回りません。
売上の目標を上げるときも、同じように現金を計算します。月商100万円から200万円を目指すなら、増える100万円分の商品原価はいくら必要か。カードの締め日と支払日はいつか。入金が支払いより後になる月はないか。
ここを確認せずに広告やクーポンで注文だけを増やすと、目標を達成した月に、口座がいちばん苦しくなります。
注文が少ないうちは、この問題は表に出てこない
この話がやっかいなのは、注文が少ないうちは何も起きないところです。手元の資金で十分に耐えられるので、時間差があること自体に気づきません。
問題が出るのは、伸び始めたときです。売上が2倍、3倍になれば、先に必要な仕入れ代も2倍、3倍になります。入金までの時間は変わらないので、埋めなければいけない穴だけが大きくなります。
だから、順調に見えている時期こそ、返品やキャンセルが増えても払えるか、入金が遅れた月でも1か月分の支払いを持ちこたえられるかを確認しておく。あのとき僕がやっていなかったのは、まさにここでした。
仕入れの判断も同じです。仕入れは、買う瞬間よりそのあとのほうがずっと長い。検品で不良が出たら。保管場所を使ったら。値下げしても残ったら。そこまで想像して初めて、その仕入れ価格の意味が決まります。
さいごに
400万円売れた。粗利益率は60%。それだけ聞けば、かなり儲かっている店に見えます。少し前までの僕も、そう思っていました。
現実には、発送できない400万円は入金されず、160万円ほどの仕入れ代だけが先に出ていきました。カードの枠は埋まり、口座は生活費込みで50万円を切りました。
この記事のまとめ
- 売上・利益・現金・在庫は同じものではない
- 払えるのは現金だけ
- 発送が止まると、売上だけが増えて入金が止まる
- 見るのは月末残高ではなく、いちばん残高が少なくなる日
- 苦しいときに増やすのは、売上ではなく手元の現金
売上が伸び始めたときほど、管理画面の大きな数字だけを見ないほうがいいです。仕入れ代が出る日、カードの支払日、発送できる日、入金される日を並べてみてください。
その途中で残高が尽きるなら、利益が出ていても店は止まります。売上が現金へ変わるまでの時間を管理するのも、商品を売るのと同じくらい大事な店舗運営だと思っています。
資金の話は、必要額・入金の時期・在庫の3つに分かれます。
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この記事を書いた人

ラクマート認定講師:TAKAHIRO
- 2015年から3年間ネットショップに挑戦するも1円も稼げず、100万円以上の借金を負う
- 2018年に融資を受け、ネットショップ経営に独学で挑戦する
- 初年度から年商2,000万円以上を売り上げる
- 2022年に楽天市場「月間優良ショップ」を受賞
- 2022年に始めたYouTubeが1ヶ月で登録者1万人突破(現在は3万人以上)
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- ラクマートでの累計仕入れは6,000万円以上。最上位のV10会員
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ふだんは、こんな発信をしています
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